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セミナー報告

2008年 3月  第56回JFMAモーニングセミナー


  「日本の花を世界に・花の新品種開発奮闘中」
    
     有限会社 フローラトゥエンンティワン 代表取締役社長
            坂嵜 潮 (さかざき うしお) 氏

日時   :2008年3月11日(火)9:00~10:30

場所   :法政大学外濠校舎 S304教室

 北海道大学農学部時代、農家で働くことを条件に突然1年休学してドイツへ。ドイツの大きなワイン農家での寮に住みワインの仕事に就く。帰国後サントリー㈱入社。社命でブラジルへ行き、ワインのプロジェクトに従事。南ブラジルで出会ったペチュニア原種を用い京成バラ園芸㈱故鈴木省三・故平林浩両氏とともに「サフィニア」3品種を育成、同社の花事業部チーフブリーダーとしていくつもの世界的ヒットシリーズを世に送り出されました。1988年同社退社後、現新会社を設立。世界的な生産販売グループProven Winnersに独占的に品種を供給しています。夢が実現した今、次になすべき事とは?の自問自答をお話していただきました。セミナーには31名が参加しました。


背中を押したのは車の中の会話

ペチュニアの原種からバイオ技術で出来た「サフィニア」を販売するプロジェクトを立ち上げた事が、サントリー㈱がフラワービジネスに参入したきっかけとなりました。「サフィニア」はフラワー業界にインパクトを与え、私は、新しい品種を開発する「ブリーダー」の職に就きました。ビジネスが順調に走り出した頃、花をどう売るのかの、マーケティングを真剣に研究している小川教授と出会い、興味を持ちました。なぜ「サフィニア」はブレイクしたのか?品種が良かった? それともビジネスモデルが良かったのか?自分が社長ならどうするだろうとずっと反芻しながら考えていました。
 ある時、カリフォルニアでの車中でProven Winners のメンバーである友人が、応援しよう!と言ってくれた言葉で独立を決心、花の世界で、ファッションの世界のGucci のような世界ブランドが誕生できないかという可能性にかけてみようと思いました。 また、なるべく多くのライセンス先を作りロイヤリティー販売するというライセンスの常識をひっくり返し、PWにだけ販売、ロイヤリティーを貰うという1:1のライセンスの考え方で独占的に供給しなければ、世界ブランドは出来ないであろうと考えました。

起業のミッションと狙い

地球の知的財産目録のうち観賞用植物に利用されているものはまだまだ少ない。バラでも育種に使われるのは5~6種で95%は使用されていない。「優れた性質を見出して新しい価値を持った品種を世に出したい。」この事をひとつのミッションにして行こうと思います。またPWにだけ品種を提供しブランド競争力を維持し、ブランドが成長すれば管理も楽、利益も大となり、1:1のライセンス契約はお互い信頼関係が築ける関係だと思います。

夢の実現は山を登るが如し

一人でも効率良く育種をするにはどうすればいいか?交配は自宅の小さなハウスで、栽培・選抜はアメリカで。育種にはリードタイムがあり商品化までに最低3年がかかります。出資金が底を尽いてPWに出資金を要請した事もありました。25,000本栽培して選抜で商品として残るのはたった5~10本となります。アメリカに出資者6人で「PLANT21」を、日本に「㈲フローレ21」を設立、銀行よりエコ資金を借りて自前の温室を持ち、培養設備も併設しました。


育種は一歩一歩の積み重ね

育種は毎年1歩づつしか前へ進めません。最初は品種数も少なく、売上もなかったのですが、毎年の積み重ね効果で販売量も伸びてきました。一方、この10年は激動の業界で合従連衡の嵐でした。世界の園芸業界の再編が進んでおり、勢力図がどんどん変わる。それぞれの会社がマーケティングに目覚めブランドがどんどん出来て乱立すると、消費者には商品が見えなくなり、消費の減退につながってきます。更に品種開発競争激化で商品寿命が短くなり、個人育種家のスター誕生が困難になってきました。世界に拠点を設けて世界の人達と組んで地域で育種家を育てる「育種の世界リレーション構想」も前へ進まない状況なのが悩ましいところです。



PWは世界ブランドになれるか

PWNA(アメリカ、カナダ)は競争から抜け出し、高いブランドステータスを構築しました。
心配すべきはブランド買収リスクです。PWEU(ヨーロッパ)はスタートの遅れと競争激化、及びリテイルブランドの台頭に苦戦しています。PWA(日本)はガーデニングブーム後のブランド淘汰でここで生き残れなければ消え去るのみという現状です。何故消費が低迷しているのか答えが見つからず、消費者ニーズとのずれから新しいビジネスモデルを構築する必要があります。

これから何をどうすべきなのか

大学への奨学寄付として日本の遺伝資源を利用したキイチゴの品種開発をしています。
ラズベリー、ブラックベリーに並ぶ品種を日本から出して生産に乗せる方法を考えています。また、地元の農家のために育種家として何が出来るかをずっと考えてきました。農協、農家とチームを組んで切花やイチゴの育種プロジェクトを進めています。
更に田の畦畔(けいはん)の草刈の労力を軽減するため、植物で雑草を抑える管理法の開発と育種を進めています。

ミッションの再確認の必要性

周りの人達の熱い支援で10年でビジネスとしては黒字になり最初の目標は達成できました。
今後も山椒は小粒で・・・とビジネスの大きさも質もコントロールして行くつもりです。また育種家として社会に何が還元できるかを模索しています。そして次の世代にどうバトンを渡すか、考え方、方向性をどう伝えるかを考えて行きたいと思います。